【第2回】生体認証縁切寺  他人受容との縁切り

 他人受容との縁切り

先月の【第1回】生体認証縁切寺では、入れ替わりの激しいパートタイム職場、アルバイト職場、大学キャンパスなどで入場管理にIDカードを使うと、退職に伴うカード抹消と新規発行に関わる費用がばかにならないというお話をしました。

海外は、値段の安いタイプAカードを使うケースが圧倒的に多いのですが、日本では、高機能で高価なタイプCとタイプBカードが圧倒的なので、なおさら費用がかかります。


実際はそう簡単に行かない

そこで、「生体認証だとカード費用がかからないので経費が安くなる」と結論づけたのですが、実際はそう簡単に行かないことが多いのです。

その原因の一つは、今回のテーマである他人受容率(故意または誤って本人であると認証してしまう割合のこと)がゼロではないことです。

展示会やデモの場で、試しに自分の指紋、静脈、顔のいずれかを登録して認証すると、たいてい正しく認証してくれます。

あらかじめIDカードまたはテンキーで自分の生体情報(テンプレート)だけを呼び出して認証するやりかた(「1対1認証」)なら、ほかに問題がなければその商品を信頼しても大丈夫そうです。

一方、IDカードを使いたくない職場や、食品工業などハンズフリーで使いたい職場では、専門用語でいう「1対N認証」(または「総当たり認証」)が必要です。
このときは他人受容率の大きさが問題になるので、もっと突っ込んだ評価が必要です。


3つの質問をすることをお勧めします

説明員に「この商品の他人受容率は?」と聞くと、たいてい「0.0001%以下です」など、ごくわずかのエラーしかないとの答えが返ってきます。
私はここで、続けて次の3つの質問をすることをお勧めします。

1) 今やってみた装置には何人分の生体情報(テンプレート)が登録されているのですか?
2) 他人受容率の数字は、実用データですか?それとも実験室データですか?
3) ○○人以上を対象にしたいのですが、「1対N認証」だけでできますか?

1)・・たぶん聞いても意味のない質問でしょうね。
たいてい、営業担当者数名から数十名程度しか登録されていないことが多いからです。
デモ機に数百人以上の生体情報(テンプレート)が入っていることはめったにありません。
ですから、デモでうまく認証されただけで「すごい!」と感動してしまってはいけません。

2)・・少々意地悪な質問です。
信頼できる実用データの測定が難しいからです。
ふつうは、数十人から数百人の社員またはアルバイトを集め、例えば指紋なら1人当たり数本から10本の指を登録して統計的に意味のある回数まで繰り返した実験結果を他人受容率の数字として使うことが多いのです。
フィールドでの実用データを取るには、ユーザーの協力、長期間のデータ把握、分析のための人手などが必要ですから、精度の高いデータを得るのは至難の業です。
したがって、この質問をしても、結果的に禅問答になるだけで、他人受容率が優れているか判断するのはなかなか難しい仕事です。

3)・・具体的で実践的な質問です。
1,000人以上で「1対N認証」したいが大丈夫か?と聞いて、「大丈夫」という答えが返ってきたら、その商品はかなり「いい線」です。
この、「いい線」の商品は市場にはあまり多くありません。
ちなみに、私たちロックシステムグループが輸入販売するIrisID(アイリス・アイディ)とSRI Sarnoff(エスアールアイ・サーノフ)の虹彩認証は、10万人以上の「1対N認証」でも大丈夫です。

生体情報登録総数が100人以下の職場なら、「1対N認証」をしても、たいていのメーカーの商品はまず問題なく使えるでしょう(ただし、認証に必要な秒数の確認と、次回の縁切り寺のテーマとなる「本人拒否率」の確認は必要です)。


まとめ

だんだん細かい話になってしまいましたが、まとめると、

a. 「1対N認証」(総当たり認証)の対象者数が数十人から数百人以下なら、指紋、静脈、顔など、一般の生体認証が導入できます。

b. 対象者数が5百人以上の現場では、最右翼を虹彩認証が占める以外は、「1対N認証」(総当たり認証)で使える商品はそれほど多くありません。

以上のことを念頭に置いて「カードとの縁切り」を検討することをお勧めします。

次回は、【第3回】生体認証縁切寺「本人拒否との縁切り」をお届けします。他人受容と本人拒否の関係についてもお話しする予定です。

【企画・編集】 株式会社ロックシステム 企画室

  【文】 顧問 長瀬 泰郎

ナ/長瀬