虹彩認証ゼミナール【第6回】

最終回

虹彩認証の原理

今年1月からお読みいただいた虹彩認証に関する6回シリーズの最終回となりました。

今回は虹彩認証の原理についてお話しします。

前回、認証と照合は違うものだと説明しましたが、一般には混同して使われているため、本稿では「照合」の意味で「認証」という用語を使うことにします。


 なぜ虹彩か

指紋、顔、静脈など、虹彩以外の生体認証では、体の表面または表面に近い皮下の一部についての特徴を把握して処理します。

認証装置で取り出すデータポイントの数は、それぞれ数十程度です。

虹彩とは、瞳孔の回りの模様がついたドーナツ状リングのことで、外から見える唯一の内臓器官と言われています。

網膜も内臓器官ですが、これを見るには瞳孔を通して眼球の奥まで覗いてやる必要があります。

虹彩は人によって異なります。同じ人の右目と左目でも違いがあります。

自分の虹彩と同じものが見つかる確率は10の76乗分の1にすぎません。

透明な角膜でできたフロントガラスで保護され、まぶたのワイパーと涙のウィンドウォッシャーで常に綺麗な状態に保たれているので、カメラで簡単に撮影できます。

虹彩には顔などのような加齢による変化はありません。

また、指紋のように表面の傷、皮脂、パターンのゆがみなどの影響も受けません。

弊社が取り扱う虹彩認証機器は、英ケンブリッジ大学のジョン・ドーグマン教授が開発した認証アルゴリズムを採用しています。

このアルゴリズムの基本技術は特許化されていましたが、その中の主要なものの権利は数年前に消滅しています。


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虹彩のイメージはどうやって把握するのか

下図をご覧ください。


 

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人種により虹彩には様々な色があります。日本人の虹彩はその多くが褐色です。

虹彩にテレビのリモコンなどで使われているのと同じ近赤外線の光を当てて撮影すると、元々の色に関係なく、紋様のついたグレーの画像が得られます。

この画像から、瞳の回りのドーナツ状の虹彩部分を切り出します。

この画像をバウムクーヘンのように8本の薄いリングに分け、それぞれのリングを360度にわたって展開します。この映像をガーバーフィルターというフィルターにかけると、最終的には1本のリング当たり256個の1あるいは0のデジタル情報になります。

8本あるリングを全部つなげると、合計2,048個の1あるいは0のデジタル情報、つまり2,048ビットのデータになります。

これが「アイリスコード」と呼ばれ虹彩のアイデンティティを表わす情報です。

下図のように、登録済のデータ(テンプレート)と認証希望者のデータそれぞれの2,048ビット同士を比較します。


 

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2,048個を比べ、一致していないものの割合を調べます。

一致していないビットの割合のことを「ハミング距離(ハミング・ディスタンス)」と言います。

この比較処理は単純なので、極めて速く行うことができます。

顔や目の傾きによって極座標の原点位置が変わるので、それぞれのアイリスコードの原点を時計方向、反時計方向に少しずらして、最もハミング距離の少ない組み合わせを採用します。

このハミング距離が0.342(一致しない比率が34%、一致する比率が66%)のとき、他人の虹彩を誤って本人のものと間違える確率は120万分の1と、極めてわずかな値になります。

このように、「アイリスコード」は本人を特定するのに極めて有効なものです。

アイリスコード同士の比較(マッチング)のためにメモリーへのデータの出し入れを行う必要がないので、指紋、顔などの照合処理に比べて桁違いに速いのです。 


まとめ

ドーグマン教授による認証アルゴリズムは、指紋、顔、静脈などの生体認証アルゴリズムと比べて極めて速く、また極めて正確な結果をもたらします。

虹彩認証でも、このドーグマンアルゴリズムを使わず、独自のアルゴリズムを採用しているメーカーもあります。しかし、精度が検証され、これまで他人を誤って認証した事実がないとした数多くの文献や資料は、ドーグマンアルゴリズムについてだけのものです。

ドーグマンアルゴリズムの優れた性能は、数多くの追実験、運用実績、学会発表などで確認されているのです。


  

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【企画・編集】 株式会社ロックシステム 企画室

  【文】 顧問 長瀬 泰郎

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