ASIS International世界大会レポート 4回シリーズ[2回目]

皆さん、こんにちは!

2016年9月12日から開催された、世界最大級のセキュリティショー「ASIS International 世界大会」に参加してまいりました。

 

今回は、世界大会レポートの第2回目です!

 

第2回目は、「セミナー編」です。

ASIS世界大会の最大の魅力の一つは、やはり250以上のセミナーセッションです。

このセミナーで、専門家たちが集まって学ぶ学会のように、セキュリティの動向や考え方を学ぶことができます。

asis-seminar

 


Keynote(基調講演)

今年のセキュリティの著名人を招いて実施するキーノートでは、下記の2名の方がお話されました。

 

ted-kopel

 テッド・コッペル  (ABCテレビ「ナイトライン」アンカーマン,放送ジャーナリスト) 

⇒最近出版された「Lights Out:A Cyberattack,A Nation Unprepareds,Surviving the Aftermath」において、サイバー大災害の脅威、どのように国家は備えるべきかを説明されました。

 

 

elliot-abrams

 エリオット・アブラムス  (ブッシュ政権時代の国家安全保障担当の大統領副補佐官) 

⇒アメリカの外交政策において、中東の不安定性と危険が差し迫る中、安全なアメリカを維持するためにはどうすべきかを説明されました。

 

 


受講セミナー

 Meetings the Security Challenges of the Olympics (オリンピックのセキュリティ課題に立ち向かう) 

⇒ミュンヘンとアトランタの両オリンピックで起きた事件を例に、テロと爆破のリスクがありうることを説明。

路上犯罪や反対運動など、地元のリオならではのリスクを理解することが、オリンピックセキュリティにおいて重要だと指摘。日本ではリオと同じリスクは低いが、日本ならではのリスクがあるはずという。

リオでは、警察と軍隊による武装警備で抑え込むセキュリティが目立っていた。

リオデジャネイロオリンピックの概要:

施設数32(市内32、市外5)、イベント数306、参加国206、選手総数11,339、軍と警察動員数85,000、メディア関係者数32,000

セキュリティ上考慮すべき(した)事項:

反対派、交通、健康維持、政治、経済、予算、警察のプレゼンス、街頭犯罪抑え込み、ファベイラ(スラム地区)の影響など

 

 Active Shooter: The ASIS and NFPA Initiative (無差別銃撃対策におけるASISと全米防火協会の協調取り組み) 

⇒「普通は別々のミッションを担うのに、何で消防団体が防犯団体と協力するの?」という問いに対する一つの答え。人が行きかう施設での安全と安心を確保する、特に無差別銃撃に対応するためにはセキュリティと安全に関わる団体が協力していくことが重要である。

 

  The Future of Security is Here  (セキュリティの未来はここにある) 

⇒下記の14のカテゴリに分けて動向を紹介。また、それぞれのカテゴリで特徴的な出展社も紹介。

①Mobility(可動性)

②Incident Management(事故管理)

③Prescritive Analytics(規範分析)

④Security Data Science AKA Big Data(セキュリティデータ科学[ビッグデータなど])

⑤Robotics(ロボット工学)

⑥Infrastructure Trends(インフラ傾向)

⑦Dashboard and cross-platform Software systems(ダッシュボードとプラットフォーム間共通のソフトウェアシステム)

⑧Data Filtering and Correction(情報のフィルタリングと修正)

⑨Augmented reality(拡張現実)

⑩Tracking/Monitoring(追跡/モニタリング)

⑪Surveillance(監視)

⑫Wireless(無線)

⑬Human Resource Management(人的資源管理)

⑭Compliance(順守、コンプライアンス)

 

 Leveraging Video Surveillance for Crime Prevention (犯罪防止のためのビデオ監視の活用) 

⇒現役の米警察担当者により、実際の犯罪発生時にどのように監視カメラが利用され、どのような設置が効果的かの紹介が行われた。

1.明るさが足りない環境が多い。

2.カメラ設置場所が適切でないケースが多い。

3.一定地域に複数のカメラを置く場合、最低1台は顔が識別できるものが必要(カメラを肩の高さにするなど)。

4.録画画像エクスポートの際は、すぐに再生できることが必要。

5.車両監視では、システム中最低一台はナンバープレートが識別できるものとする必要あり。

6.最新の画像解析機能も活用すべき(例:顔や服装などによる検索)

 

 Implementing an Explosive Detection K9 Unit at Mall of America (米国最大のショッピングセンターにおける爆発物検知犬(K9)部隊の活用) 

⇒年間4千万人が訪れるモール・オブ・アメリカでは、3チームで15匹の爆発物検知犬を活用している。1チーム当たり月5万ドル(5百万円)の費用がかかり、5~12件の出動がある。一般客にストレスを与えず効果的に爆発物検知を行う方法を紹介。

(今年のASIS世界大会の展示場入口で何頭もの探知犬が訪問者のカバンを確認していた。)

 

 An Integrated Approach to Managing Security Operations (セキュリティの管理業務への統合的アプローチ) 

⇒パキスタンにおけるケースを例に、ASISが作成し米国標準化としたほかISO標準となったセキュリティ運用基準(ISO 28002 with the ANSI/ASIS.SPC.1 Standard)をいかに日常管理に落とし込むかについて紹介した。

専門性の向上に役立ち、業務管理の円滑化に寄与しただけでなく、セキュリティ管理そのもののイメージアップに貢献したことを強調している。

 

 Strategies for Hardening Soft Targets  (ソフトターゲットの強化戦略) 

⇒公園、教会、博物館、美術館など文化的価値のあるソフトターゲットを、その管理者がいかにして守るかということが大きな課題となっている。セミナーではニューヨーク市植物園における管理事例を参考に、攻撃計画者の行動分析手法を紹介する。

守りの王道は存在しないが、「人」、「プロファイリング」、「地元警察」、「守りの階層化」などについての説明があった。

セキュリティ専門家への提言 (1)見える化、(2)常に意識、(3)犯罪者に先行、(4)来所者とスタッフ全員に向き合う、(5)異変はすぐ発信(If you see something, say something. )

 

 Behavior Detection and Assessment: Protecting Mall of America  (不審者行動の検知と分析:米国最大のショッピングセンター、モール・オブ・アメリカの警備) 

⇒ミネソタ州ブルーミントンにあるこの施設には年間4千2百万人もの人が訪れる。テナント数520。

施設経営側は常に「守りの立場」に立たされている。一方、攻撃側は「方法と時を自由に選ぶ」ことができる。施設警備の予算に限りがある中で、この施設が選んだのはイスラエルで開発され世界中でその効果が評価されている「防犯プロファイリング」であった。

TSA(米国運輸保安庁)が意図的に武器を空港保安検査に通したところ、95%が検出されずに通過してしまった話、84人が犠牲になった仏ニースのトラック無差別殺人で犯行の2時間前の検問で、アイスクリームを積んでいなかったにも拘わらず「アイスクリーム輸送中」の回答で通過させてしまった件など、全てに網をかける方法の非効率性の例が紹介された。

この施設では、不審な人物に対して質問を重ねることで、「悪の企図」を見抜く「防犯プロファイリング」を採用し、効果を挙げている。

曰く、「子供でも大人でも、悪人でも、人間がチャレンジ(挑戦)されたときに見せる反射反応は同じ」。

たむろする人、写真を撮りまくる人などを中心に適用している。

 

 Implementing an Effective Food Defense and Security Plan  (フードディフェンスとセキュリティプランの導入) 

⇒FDA(米国食品医薬品局)は今年食品への異物混入に関するルールを法制化した。これまでの法律になかった、故意による異物混入対策が求められるようになった(脆弱性評価、リスク軽減対策、訓練と記録保持、従業員の意識向上対策など)。

年商1千万ドル(10億円以下)の企業は2021年7月まで、パートなどを含む従業員500人以下の企業は2020年7月まで、それ以外の企業は2019年7月までに上記対策を完了しなければならない。

具体策として、施設入口の強化、出入管理の実施、雇用時の犯歴調査、セキュリティ専門家の常駐、監視カメラ、フェンス強化、共連れ入場対策、適切な照明その他が求められる。

日本の食品業界もこれに準じた対策が求められるのではないか?

 

 Trends That Affect Today’s Security Industry(今日のセキュリティ業界に影響を与える動向) 

⇒今日のセキュリティ業界に影響を与える5つの動向

①Business Continuity and Crisis Management (ビジネス継続性と危機管理)

②Terrorism (テロ)

③Industrial Espionage (産業スパイ)

④Active Shooter (アクティブ・シューター:無差別銃乱射)

⑤Cyber Security (サイバー・セキュリティ)

 

 How ISIS Cyber Attacks Affect IT Security(ISISサイバー攻撃が、ITセキュリティに与える影響) 

⇒ISISは、物理的攻撃だけでなく、サーバー攻撃に注力している。また、ハッカーの発掘/取り込みにソーシャルメディアを巧みに活用し、成功している。最近では、遠隔制御銃器やロボット、ドローンなどの活用も始めており、IT革命がそのままテロの脅威を高めている。

 

 NYPD Recommendation for Active Shooter Incidents (ニューヨーク市警が勧める無差別銃撃対策) 

⇒1996年から2012年までの16年間に324件が発生。97%が男による。98%が一人の犯行。15~19歳または35~44歳の犯行が最も多い。10~12分で警察が到着し、84%のケースで武器による解決(警察による銃撃または自殺)。

ニューヨーク市警では15項目の対策提案をしており、その中には国土安全保障省スローガンの「Run, Hide, Fight(逃げろ、隠れろ、さもなくば戦え)」に似た「Evacuate, Hide, Take Action(逃げろ、隠れろ、行動せよ)」がある。

アメリカでは、幼稚園の園児に「Stop, Drop and Roll(止まれ、倒れろ、転がれ)」と、服に火がついたときの対処法を教えています。このようにシンプルな行動ルールを繰り返し反復し続けることで無差別銃撃に対する無意識動作を身に着けることができる。

 

 What Should We Do with Biometrics?(我々は、バイオメトリクス(生体認証)で何をすべきか?) 

⇒バイオメトリクスは、ITの歴史と同じ軌跡をなぞる可能性を秘めて

いる。

一部大手企業で採用されていたITが今ではスマートフォンに代表されるように一般コンシューマーまで浸透してきた。同じようにバイオメトリクスも、高セキュリティのための大手企業での採用から最近は中小企業での導入が進んでいる。

今後は一般コンシューマーへの浸透が期待される。既に指紋認証がスマートフォーンに組み込まれているなど、今後の認証制度との信頼性の観点から、あらゆる個人認証がバイオメトリクスに置き換わることも否定できない。

将来すべてがデジタル化される中で、生活の安全や、セキュリティ、法令順守、緊急連絡などにおいて、生体認証が一つのキーワードであることは間違いない。

ビジネスとして見た場合も、ITの歴史同様、今後は Biometrics as a Service として、産業が進むのではとの見方が強い。そのためにも、ITプラットフォームや各種センサーとの連動が今後求められてくる。

 


 今回ご紹介したセミナーは、ごく一部のセミナーです。セキュリティ担当者が、現在、抱えている課題や悩みに対して、きっと役に立つ情報を入手することができます!セミナー終了後には、講師との交流も可能です。もし、セキュリティに関して課題や悩みがあるのであれば、来年、参加の検討をされては如何でしょうか? 

 

来月配信予定の第3回は、「展示会編」をお送ります。乞うご期待ください!