<第1回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・

これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR”。
施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存などの諸方面への影響など、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。
保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。
新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。
最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。


<第1回 目次>

1 IRとは?

2 IR産業展の熱気

3 セキュリティとIR


1 IRとは?

2019年現在、多くの人の口の端にあがるとき、という単語には“カジノ”のイメージが付いて回ります。
日本では賭博は公序良俗を乱すものとして禁止されており、賭博とはギャンブルであり、ギャンブルを行うカジノとは風紀を乱すものであり、治安悪化や依存症など重篤な社会問題を引き起こすものであり、つまるところ負の側面が大きい、というイメージがついて回ります。

反面、海外のみならず日本国内にもカジノファンは存在します。
アメリカのラスベガス、ドイツのバーデンバーデン、中国のマカオなど海外のカジノは多くの観光客が訪れ、その歴史も古く、華やかな社交場、観光の目玉として知れ渡っています。
海外でカジノを経験したことがある、もしくは経験してみたいと思っている日本人も多く、ガイドブックや旅行サイトの多さでもその人気はうかがい知ることができます。

さて、「毒は強いが魅力的」という、さながら薔薇、あるいは河豚(フグ)、のようなカジノが印象的な“IR”ですが、実際のところ日本で打ち出されているIR法案においてカジノはあくまでそのコンテンツのひとつです。
“カジノ”と一口に言っても世界のカジノはフォーマルを基調としたドレスコードが存在するヴェネツィア、Tシャツにスニーカーといったラフな出で立ちでOKなラスベガスやマカオなど様々であり、その佇まいも格調高いお城から心躍るテーマパーク型などユニークです。
そのなかで日本が目指すIRとは、カジノのほかにショーアップされたステージやホスピタリティ溢れるホテルを内包したレジャー性の高い施設であり、加えてビジネス拠点にもなりうる国際展示場や美術館などの文化施設も併せ持つ、まさに“統合リゾート”となっています。
華やかで活気あるラスベガスのカジノ一帯、リゾート感たっぷりのシンガポールなどのイメージが近いでしょう。

2 IR産業展の熱気

2019年5月15日~16日の二日間、インテックス大阪にて第1回 関西統合型リゾート産業展(同時開催 夢洲次世代まちづくりEXPO)が開催されました。
ウィン・リゾーツやシーザーズ・エンターテインメントといった名だたるIR事業者、ディノアライブで注目のON-ART、情報技術の先端を披露するパナソニックや日本電気など電機メーカ、誘致活動に熱心な地方自治体などバラエティに富んだ出展者。
目を引く鮮やかな七色のカクテル・ショウや地元外食産業・どうとんぼり神座のふるまいラーメンなど、ビジネスの展示会とは言えエンタメ色が高くIRのワクワク感が味わえるものでした。

一方で自動運転などのIcT技術、ブロックチェーンを活用したビッグデータの共同利用、水素エネルギーなど次世代資源への取り組み提案など“新しい街づくり”に最先端技術を投入したい企業側の熱意を感じる側面もありました。
世界に多くあるIR事業地の中でも“クリーン&エコロジー”という日本ならではの視点にあふれています。
Smart Technologyなカジノ、というコンセプトは日本型IRを世界で際立たせる特徴の一つになるかもしれません。

また、警備会社と電機メーカが手掛ける巡回監視ロボット、お互いに顔を見合わせた状態で会話ができる翻訳機など、子どものころに夢見たSF世界が近づいて来ていることも感じます。
SF世界のジャパニーズスタイル!外国人でなくても十分楽しめます。

3 セキュリティとIR

さて、多くの人の夢にあふれる日本型IRですが、この一大産業を導入するにあたり懸念事項のひとつとなっているのが

  • 治安悪化

  • 依存症対策

です。

物理セキュリティを生業としている当社としては、“治安悪化”の点について考察してみたいと思います。

一口に治安悪化と言っても、「何の治安が」「どのように悪化するか」ということについてはシミュレーションと分析が必要になってきます。

  • 流入してくる客層のタイプは日本人か、外国人か?
  • 雇用されるのはどんな職種でどんな人種か?
  • 何人雇用されるのか?
  • そこで流通するお金の規模はいくらくらい?
  • 扱われるのは現金なのかEマネーなのか?
  • 宝飾品、はたまた金塊?
  • 想定される脅威とは?
  • 旅行客を狙ったスリ、置き引き、新手の詐欺か強盗か?
  • 気を付けるべきは予想のつかない地震や洪水など天災か?
  • 思想や外圧によるテロリストか恨みつらみによる無差別殺人か?
  • セキュリティと一言で言っても、警備員を雇えばいいのか?
  • 出入りを管理するシステムを導入すればいいのか?
  • 来場する顧客を検査すればいいのか?

その目的と行動によって変わってきます。

もちろん、日本でカジノを含むIRを運営する事業者は世界でも名の知れた大企業になります。
彼らはノウハウを知り尽くしており、リスクに対する知見もフレームワークも十分に持ち得ています。
特にカジノはそのゲーム性と巨額のマネーが行き交う特殊性からセキュリティについての研究も進んでおり、海外では専門家も存在します。
がしかし、新しいマーケットの舞台となるのは“安全”で知られたここ日本です。
日本とは高度な技術を持ち成熟した社会でありながら、そこに居住する人々の“暗黙の”ルールとマナーで“安心”を担保するという、セキュリティ分野においては世界でも稀な文明国家です。
しかしながらこの国には、時として自暴自棄を伴い、自分も他人も傷つけることを恐れもしない性質を持ちえた因子が存在し、密かに「テロ先進国」と呼ばれる二面性が影を落としているのも事実です。

この“安全”を誰もが信じる日本に、歴史も顧客も脅威も影響もほぼ完成されている“黒船”がやってくることが、その実情を知り得ない我々日本人の“安心”を脅かすのは当然です。
もともと持ち得る黒い影が表に出てくることもあり得ます。
密かに迫りくる脅威を図る物差しは今現在、日本にはありません。

がしかし、人口減少・高齢化の進む日本経済において外貨流入・地場産業のカギとなるIRを「知らない・わからない」からくる“不安”という一点だけで忌避することはあまりに短絡的です。
「知らない・わからない」を知って、“不安”を“安心”に変えればいいのです。

日本文化が生み出す新しいカジノスタイル。みなさん、一緒に研究しませんか?


VIVA、CASINO!カジノセキュリティ研究会