<第2回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・
これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR)”。
施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存などの諸方面への影響など、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。
保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。
新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。
最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。

 

<第2回 目次>
1 IRにおけるセキュリティとは?①治安の悪化
2 IRにおけるセキュリティとは?②ギャンブル依存症
3 そして、カジノのセキュリティとは?

1 IRにおけるセキュリティとは? ①治安の悪化

弊社ロックシステムが本社を構える横浜市も、IR誘致に揺れる都市のひとつです。2019年5月末現在、市はその巨額な経済効果を見込んで開発案を提示していますが、地元団体・住民の反対で誘致は難航しています。横浜市の反対運動で特徴的なのは「IRは誘致したいがカジノはお断り」という姿勢です。IRそのもののもつ経済的ポテンシャルは評価しているものの、今回のIR政策の求心力であるカジノは不要という点には、カジノ誘致でもたらされるデメリットを地域に持ち込みたくないという気持ちの表れであることは間違いないでしょう。(そもそもカジノに頼らなくても地域に高い魅力があるという自負もあるかもしれませんが・・・)ともあれ、カジノに象徴されるIRにおいて”セキュリティリスク”とは何でしょう?

「カジノ」開発の上でリスクと称される懸念事項は、大きく分けて「治安の悪化」と「ギャンブル依存症」の二つと言われています。

「治安の悪化」はカジノが昔から持つイメージが影響している要因のひとつでしょう。カジノはその歴史からマフィアを想起させます。実際のところラスベガスがカジノとして興隆した背景にはマフィアの資金力と暗躍がありました。が、その後さまざまな変遷を経て、カジノは現在クリーンなビジネスと言われています。

その担保となっているのが「ライセンス」です。先のラスベガスでは、このライセンスを取得するための審査が非常に厳しく、その組織、役員個人はもちろん、親族に至る資金や履歴の情報開示、さらに規制当局による裏付け、背面調査など手間も暇も費用もかかるステップのクリアが求められます。取得後も同様にその適格性が監視され続けます。日本のIR推進法案においてもこれらのライセンスに準じる仕組みを整備中です。カジノ事業者資格を得るためには清廉潔白で遵法精神に基づいた歴史とポリシー、さらにそれらに応えうる資金力と継続性が要求されるでしょう。

なお、現在のところ参入業者としてギャラクシー・エンターテインメントやメルコリゾーツ&エンターテインメントなどの世界有数のカジノ事業者をはじめ、関西の有力企業向けにオリックスと出資協力を開始したというMGMリゾーツが名乗りを挙げています。国内企業では既に海外でカジノ運営を行っているセガサミーやユニバーサルエンターテインメント等々そうそうたる企業が食い込んでくるのではと目されています。

2 IRにおけるセキュリティとは?②ギャンブル依存症

さてもう一つ、カジノに起因するとされるリスク、「ギャンブル依存症」。こちらは注視が必要です。

カジノが日本に入って来る、来ないに関わらず、日本にはパチンコ・競馬・競輪などの公営ギャンブルが存在し、過去の統計調査では300~500万人にギャンブル依存症の疑いがあるとも言われています。
そもそも依存症とは日常生活が送れなくなるほど「何か」にのめり込み、自分ではやめられない状態を指します。人の心をとらえて離さず破滅へ追いやる「何か」は多岐にわたり、アルコールや薬物、最近ではゲームやSNSも依存性を指摘されています。依存症自体の研究も進んでおり、その分野では意思を超越する脳の働きによる症状であることが明らかになっています。

依存症になる「きっかけ」は心の問題が多く潜んでいますが、カジノの持つゲーム性、ギャンブル性がそれらを誘引する可能性は十分にあります。今のところ依存症対策の一環として政府がカジノに示している方策は、日本人及び日本居住外国人について6000円/回のエントリーフィー(IR整備法第176条・入場料の賦課)や年齢制限、利用回数の制限(IR整備法第69条・入場規制)となっています。その他、マイナンバーカードを利用した本人確認や過去履歴の管理でもって依存症の疑いのある入場者を見極めようとしています。その実効力については議論があるところですが、パチンコ・競馬等他の公営ギャンブルも含め国は依存症対策に乗り出している状況です。

3 そして、カジノのセキュリティとは?

治安悪化、ギャンブル依存症は外側から見たカジノにまつわるリスクです。では中から見たらどのようなリスクがあるのでしょう?

こちらは運営する事業者側の視点になりますが、海外のカジノではセキュリティに対する体制も先のライセンス保持の要件となってくるため、リスク管理は重要です。過去の経験、多くの情報分析、ステークホルダーの要求など様々な要因よりリスクは評価され、管理されます。

そのポイントは大きく分けて二つあります。Surveillance「監視」とSecurity「警備」です。日本の日常でこの二つの違いを推し量ることはあまりありませんが、カジノのリスク管理上では区分された機能とされています。Surveillanceはゲーム、現金、カジノフロアの保護に重点を置いており、Securityはホテルや駐車場、飲食店、スーベニールショップなどの物理的なセキュリティに焦点を当てています。外部からのリスクのみならず、イカサマなど内部にも高いリスクが存在する点にカジノ・セキュリティの特異性があります。「明らかな不審」は判断が容易ですが、「不審かもしれない」を洗い出すためには、顧客の履歴や行動をチェックし、ディーラーや従業員の信頼性を見極め、ゲームのルールに精通した上で設備の安全性を担保するという総合的な知識とテクニックが必要になります。ここに、カジノ・セキュリティの難しさがあると言えるでしょう。次回以降、カジノ・セキュリティにおける特性の研究、最新の技術、海外事例を調査していきます。

 


VIVA、CASINO!カジノセキュリティ研究会