<第3回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・

これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR)”。

施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存、諸方面への影響など、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。

保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。

新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。

最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。

<第3回 目次>

1 モノ言う目~セキュリティカメラ

2 監視カメラは何を見ているのか

3 カジノにおけるカメラ事例

1 モノ言う目~セキュリティカメラ

”監視カメラ”が誕生した1970年代。モノクロの静止画を磁気テープに記録するという黎明期の監視カメラは半世紀の時を経て、カラー且つ鮮明な動画に進化を遂げ、大容量HDDでもって膨大な記録を残すことに成功し、優秀な映像解析技術は被写体の追求のみならずその行動を予測する高性能マシンとして成長しました。現在では「犯罪の抑止効果」という役割はもちろん、犯罪が発生した際の証拠として、または犯罪を未然に防ぐ予防措置のひとつとして、映像記録は大いに期待されています。

また、ネットワークの発達や機器の小型化・低価格化による汎用性の高まりは、カメラのフィールドを防犯にとどめることなく、自然災害による被害を最小限に食い止めるための防災ツールとして、自宅に残したペットを見守るホームセキュリティとして、あるいは買い物客の動線監視として、その活用分野は拡がっています。「目は口ほどにモノを言う」このひとつの諺が意図するところは、セキュリティカメラの事例を通してIoT全盛の現代でも実感されるポイントです。

カジノにおけるリスクマネジメントの中でも、セキュリティカメラの存在は非常に重要であることはご存じのとおりです。カメラが普及する以前、カジノにはキャットウォークと呼ばれる天井裏通路があり、監視員がソロリソロリと歩き回りイカサマや不正を監視していました。ディーラーはカジノテーブルにフワリと舞い降りる埃を見て、頭上に監視員の存在を感じたそうです。『天井裏の散歩者』で知られる江戸川乱歩の小説世界もリスクマネジメントにおいては現実世界だったのですね。これをおもんばかると、監視室一カ所にいながらにしてあらゆる情報を入手できる監視カメラはまさに「モノ言う目」と言えるでしょう。

2 監視カメラは何を見ているのか

海外のカジノフロアを見ると無数のカメラが設置されているのがわかります。さて、この”目”は何を見張っているのでしょうか?不審者?不審物?膨大な映像情報は何を抑止し、保護しているのでしょうか?

ここにカジノセキュリティの特徴である”Surveillance(監視)”の技術とノウハウが見えてきます。カジノの利益を阻害する最たるもの、それは”イカサマ”です。一攫千金を現実のものとするギャンブルは、ついて回るリスクも歴史があり、その手口も研究されています。カジノはイカサマを企てるプレーヤーのみならず、それに加担する“可能性がある”としてディーラーや従業員の振る舞いも注意深く観察する必要があります。カメラはフロアに存在するプレーヤー、ディーラー・ウェイターやクリーンスタッフに至るまでの従業員たち、テーブルに置かれた灰皿やコイン、ペイアウト(換金)マシンから出力される小切手やそこに書かれている金額、さらにはゲームの進行状況・プロセス・ステータスに至るまであらゆる映像を監視室にいる監視員に提供します。プレーヤーはどのように勝っているのか・負けているのか、ディーラーはどのようにゲームを進めているのか、フロアの従業員は事業ルールに沿った働きか、手続きを違反していないか・・・監視員は提供された情報を丁寧に観察します。

この映像と言う情報は、その写し出された人物のバックグラウンドや、地域の事件・事故などの近隣情報、さらには「その人はなぜそのような動きをするのか」という行動理解により補完され具体的なインシデントとして活きてきます。監視員はこの”目”の情報を元に疑わしい”芽”を洗い出し、被害を拡大させる前に瞬時に摘み取ることを要求されます。カジノ監視において、Surveillanceは多くの情報を分析する能力とゲームに精通している知識、観察眼と深い洞察力が必要です。

日本においてこのような厳しい監視下に常時晒されている環境はそんなに多くなく、安全が常態化している中では防災センターに常駐する係員に高い専門性が要求されないこともしばしばあります。テクノロジーを駆使し集積された情報をベースに、あらゆるインシデントに対応する監視能力を要求されるカジノ。ここではセキュリティもこれまでの日本になかった“異文化”のひとつと言えるかもしれません。

3 カジノにおけるカメラ事例

さて2016年、ペンシルベニアにあるMeadows Casino(メドーズ・カジノ)が280万ドルをかけてセキュリティカメラのシステムを入れ替えたというニュースが世間を賑わせました。敷地内に配備された24時間稼働のカメラ台数は1200台以上。規模だけでも圧倒されますが、カジノの高い要求はメーカーの技術力・製品性能を誇示する絶好の機会でもあります。メドーズで採用されているカメラのメーカーPELCO社も、そのWEBサイトでソリューションを紹介しています。


製品に自己学習解析AIを搭載するAvigilon社も同様にカジノ導入事例を紹介しています。日本の大手警備会社のセキュリティシステムにも採用されており、高解像度の画像情報はAIというインテリジェンスソリューションに活かされています。当社ロックシステムでも取り扱いがある同社製品は、空港や国際展示場などで活用されています。http://avigilon.com/industries/casinos/

「白日の下に晒す」・・・カジノにおいては無数の監視カメラが不正を暴かんがためにヒトやモノを視ており、現代においては高い情報分析テクノロジーにより見えていない部分まで晒されるようになっています。これらの技術はカジノに係わる事業者・プレーヤー・その他すべてのステークホルダーを保護しています。カジノの高いセキュリティ要求に応えることは、日本のセキュリティ産業界においてもこの国のセキュリティ全体をより良い未来へ導くカギとなることでしょう。


VIVA、CASINO!カジノセキュリティ研究会