<第4回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・
これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR)”。
施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存などの議論があるため、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。
保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。
新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。
最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。

<第4回 目次>
1 安全な国ニッポンの警備業
2 警備業務の実際
3 カジノにおける警備とは

1 安全な国ニッポンの警備業

いよいよ今月、ラグビーワールドカップが始まります!開催地はじめ全国で盛り上がりを見せているビッグイベントですが、一方で花火大会など従来のイベントが相次いで中止になっていることも皆さんご存知のことと思います。
理由は”警備員不足”。ワールドカップ警備に人手が取られているためその他のイベントで警備員確保ができず、やむなく中止となっているそうです。来年はオリンピックも控えていますので、早くも来年開催も中止発表をしているイベントもあります。

人手不足は警備業界にも及んでいます。大きなイベントが人手不足で開催できないのは、楽しみにしているお客さんはもちろん、そのイベントに多大な経済効果を期待している産業界にも痛手です。しかし、「安全な国ニッポン」でも事故や事件はゼロではなく、そのリスクヘッジとなる「警備」をないがしろにはできません。

ところで、ひとたび大きなイベントが開催されると不足する現状の警備員数は、IR実現後のカジノにおいては十分と言えるのでしょうか?
さらに言うとカジノという従来の日本にはなかった産業において、日本の警備業はそのエリアや事業者・顧客やステークホルダーを保護するためにどのような役割が期待されるのでしょうか?

2 警備業務の実際

警備業が日本で生まれたのは1964年の東京オリンピックがきっかけです。警備業界最大手のセコムは1962年創業、それに続くALSOKは1965年創業。国際的なビッグイベントが日本における警備産業の萌芽となりました。
一口に警備と言ってもその業務内容は様々です。ボディガードと言われる身辺警護、オフィスビルや商業施設に常駐し巡回警備や施設監視を行う施設警備、現金輸送や貴重品運搬、工事現場での交通誘導やイベント開催時の雑踏警備など警備業法上で大別されており、業務によっては資格や要件、職務経験などが求められます。事業者数はおよそ9500、警備員数は55万人超と言われており、ここ数年でどちらも微増となっているところを見ると、社会的にも需要が高まっており、発展し続けている産業のひとつと言えるでしょう。
また施設警備の分野には機械警備も含まれますが、1990年代からオフィスビルや大規模マンションを中心に広がっていったセキュリティシステムは、現在個人住宅においても見られるようになり、こちらも拡大している産業となっています。しかしながらその成長産業にも人手不足という足枷がはめられているのは先のとおりです。

ここでひとつ、面白い事例をご紹介します。

”セコム株式会社、AGC株式会社、株式会社ディー・エヌ・エー、株式会社NTTドコモは、世界初となるAIを活用した警戒監視・緊急対応などの警備や案内などの受付業務が提供可能な「バーチャル警備システム」の試作機を開発しました。”

今年の春にプレスリリースとなった世界初のバーチャル警備システムです。AI技術で監視警備や受付業務を行うシステムで、人手不足解消も相まって2020年の実用販売を目指しています。技術もさることながら発想のユニークさはまさに日本ならではですね!「警備=危険」という概念の海外諸国ではなかなか思い至らないアイデアらしく、その点でも世界中から注目を集めています。

3 カジノにおける警備とは

さて、カジノにおいて”警備”は何を要求されるのでしょうか?
もちろん通常の警備同様、安全を提供するための施設警備であることは間違いありませんが、ことカジノでは監視対象が増えるのはカメラの設置数から見ても明らかです。外部の不審者から財産を守るだけでなく、時には内部の従業員、ディーラー、普通の観光客から羽振りのよいハイローラー(高額を張って遊ぶプレイヤー)までもが厳しく監視されます。警備員は不審者や不審な行動を見抜く目と、犯罪につながる情報を聞き漏らさない耳、カメラや周辺から上がってくる情報を分析する頭脳を求められます。さらにイカサマを見破ることができる専門的なゲーム知識も必要です。この幅広く高い専門性が要求される警備は、どうやって実現するのでしょうか?

多くのカジノでは警備上の監視手順をマニュアルとして確立しており、実際に監視にあたる警備員は、監視のポイントをはじめゲームの進行や勝敗の見極め方、AEDの使用方法、心肺蘇生法や救命救急、危険応対時の拘束方法など多岐にわたってトレーニングを積んでいます。カジノのセキュリティ部門は組織化されており、トップの司令官・中核となる指揮官・現場の警備員など役職と職務が明確な点はちょっとした警察組織の様相です。実際の業務内容は施設内の巡回監視・監視カメラのチェック、チップや現金の回収・補充、時には酔客の対応、喧嘩など暴力行為の仲裁なども入ってきます。

カジノにおいて警備は安全管理と財産保護の肝であり、カメラ同様投資とみなされます。その分高いパフォーマンスが要求されるわけですが、ビッグイベントが開催されるたびに人手不足が取り沙汰される日本の警備業界で、継続的に必要とされるカジノ警備を満足する質と量が確保できるのか?は課題の一つとなりそうです。AIによるバーチャル警備などユニークな視点は日本の得意とするところですが、同時に世界で要求されている「カジノ独自の警備」についても研究が必要と言えるでしょう。


VIVA、CASINO!カジノセキュリティ研究会