<第8回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・

これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR)”。

施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存などの議論があるため、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。

保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。

新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。

最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。

 

<第8回 目次>

1 紛糾する横浜市IR市民説明会

2 カジノのアルコール・ドラッグ事情

3 IRで期待される認証技術

 

 

1 紛糾する横浜市IR市民説明会

 

12月に入り、横浜市ではIR誘致を目指し市民説明会が始まりました。横浜市在住・在勤者を対象に開催される市民説明会は、中区を皮切りに全18区で予定されています。弊社ロックシステムの位置する神奈川区でも12月9日に開催されており、本コラム筆者も足を運びました。

 

横浜市HP IR(統合型リゾート)市民説明会の開催について
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/seisaku/torikumi/IR/shiminsetsumeikai.html

 

横浜市はこの説明会で市民に誘致について理解を求める意向ですが、依然反対派の勢いが強いのは報道のとおりです。実際に説明会も反対派を支援する各種政党団体が会場前に陣取り、会場内外には警備員が配置される物々しさ。入場は厳格な事前登録制を敷き座席は指定、撮影録音は登録されたプレスを除き一切不可、喧々囂々とした意見交換はすわ暴動か?と思わせる一幕もありました。

 

日本経済新聞 2019/12/4付報道
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52961120U9A201C1L82000/

 

横浜市の論法としてはシンプルに言うと「少子高齢化で税収が悪化する将来を見据え、経済効果の高いIRを誘致し横浜市を継続的に活性化させたい」というもの。少子高齢化による経済的影響は横浜市に限ったことではなく、どの地域・市町村でも言えることであり、その狙いは理解できるところです。では、一説によると6~7割以上いるという反対派は何を論点にしているのでしょう?

 

市民説明会の様子では、見知らぬカジノに対する不安から来る反対意見が大きいというよりも、大多数の出席者が「カジノ誘致は税金の無駄遣い」と言う点に重きを置いているように見受けられました。横浜市は誘致費用に2億6000万円の予算を充てています。横浜市はIR誘致でもたらされる増収効果を現在の税収1兆7000億円に対してその4~6%にあたる800~1200億円と試算しています。確かにここで誘致計画が倒れると2億6000円万の予算は港町ヨコハマの海の藻屑となるでしょう。

 

一方で横浜市に限らず、税収減の直接的要因となる人口減少は非常に重要な問題です。2015年には1億2700万人いる日本の総人口が、2045年には1億人、2065年には8800万人、そのうちのおよそ4割が65歳以上の高齢者になるというのが日本の未来予想図です。その視点から考えると、反対派の勢いが強いとは言えIRという新しい産業について議論の余地がある横浜市は恵まれていると言えるのかもしれません。

 

 

2 カジノのアルコール事情

 

さて、話をカジノ・セキュリティに戻します。年末年始、多くの場所で酒宴が繰り広げられ、それに伴いトラブルの発生件数も多くなります。大人の社交場にアルコールは付き物ですが、カジノではアルコールのトラブルをどのように管理しているのでしょうか?

 

基本的にカジノのプライベートエリアではアルコール・ノンアルコールを問わずドリンクは無料で提供されます。お酒好きには魅力的ですが、カジノは”社交場”であり飲み過ぎによるトラブルはNGです。気が大きくなって暴れたり、大声で騒いだり、居眠りをしたりという多くの盛り場で見られるような光景があった場合は、マナー違反として注意や退場、国によっては逮捕もあり得ます。

 

「分をわきまえた大人が楽しむ場所」という認識とマナーが支えるカジノですが、セキュリティスタッフはゲストのアルコール分量、酔いの状態にも目を光らせています。ラスベガスのあるネバダ州では1931年、カジノが合法的に成立して以来アルコールの提供がなされていますが、反面、アルコールに依拠する犯罪が発生したという過去より、アメリカ全域においてカジノの酔客がトラブルを起こした場合はカジノに責任があるとする法律・条例が存在します。事業者側は飲酒による犯罪抑止やゲストの安全確保に責任を持っており、依存症の疑いのあるゲストには入場含めサービスの提供を禁止し、場合によっては地域と連携して管理します。

 

そして単に酔客を追い出して終わり、とはならないのがカジノ・セキュリティです。必要とあればそのゲストが誰と一緒に訪れているのか、宿泊先は施設内のホテルなのか、自ら車を運転して来ているのかどうか・・・時には一人暮らしかどうかまで確認します。彼らはゲストの安全確保と同時に、彼らの責任においてゲストが公共の場でトラブルを起こさないかどうかをも配慮し、起こす可能性があれば警察などの法執行機関と連携するなど周辺地域の安全確保にも努めています。カジノ事業者のセキュリティポリシーによるところもありますが、”セキュリティ”を広く捉えステークホルダーの安全を確保する点にその特徴があります。

 

3 IRで期待される認証技術

 

日本のIRにおけるカジノは依存症対策としてマイナンバーによる入場制限を実施しますが、それにプラスして生体認証を利用した本人確認を実施する試みも行われています。先のアルコール事情もそうですが、カジノ事業者側でもサービスの向上やセキュリティの担保として本人確認は重要です。

 

”顔認証でカジノ入場規制 運営会社が試作品公開” テレ朝NEWS 2018年1月16日記事

 

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000118816.html

 

指紋や静脈で知られる生体認証は身体的特徴を個人の特定に活用する技術であり、あらゆるシーンで一般的に使われています。しかし水分量や汚損、温湿度や光源等環境要因でも認証制度が左右されるなど、生体であるがゆえにその認証精度はばらつきがあり、その照合パーツによって長所・短所が存在します。指紋認証は導入しやすい反面、本人拒否率(False Rejetction Rate)が高く、また弊社でも引き合いの多い虹彩認証は照合率が高く誤認はまず発生しないものの、本人が認証を望む「積極的認証」を必要とします。上記の顔認証試作機も正確性を高めるために顔認証と指紋照合システムを組み合わせていますが、実際、利便性と安全性はトレードオフの関係にあります。少し前のレポートになりますが、情報処理推進機構(IPA)がわかりやすくまとめているのでご紹介します。

 

”生体認証導入・運用のためのガイドライン” 情報処理推進機構 2007年7月記事
https://www.ipa.go.jp/files/000013804.pdf

 

また、当社ホームページでも“虹彩認証ゼミナール”を掲載しております。
https://locksystem.co.jp/news/iris
 

システムの導入はその事業者のポリシー・運用目的・コストなど様々な視点から検討されるため何がベストとは一概に言えません。しかしカジノを含むIRという新しい産業において、行政・事業者・設計者などあらゆる角度から視たとき、最先端の技術導入に挑むであろうことは想像に難くありません。誘致に反論渦巻くIRですが、実現すればセキュリティ技術躍進の点でも期待されていることは間違いないでしょう。