<第11回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・
これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR)”。
施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存などの議論があるため、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。
保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。
新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。
最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。

<第11回 目次>
1 新型コロナウィルス マカオの現状
2 新型コロナウィルス 日本のIRにおける影響
3 感染予防のための物理セキュリティ

1 新型コロナウィルス マカオの現状

2020年初頭から始まりとどまる気配を見せないコロナウィルス。
日本ではこの3月、いまだ厳戒態勢が続いていますが、かの地マカオでは制限があるものの15日の休業期間を経て営業を再開しています。

マカオ新聞 2020/3/10付報道より

https://www.macaushimbun.com/news?id=30762

マカオではコロナウィルスがまだ”原因不明の肺炎”であった年始より警戒を強めており、早くから入境制限や健康管理を実施し、カジノ関連施設従業員に感染者が認められると即座にカジノ営業の停止に踏み切りました。この対応が功を奏し、67万人と言われるマカオ人口で感染者はわずか10名、全員が完治し、この原稿を書いている3月12日現在において、2月4日以降新たな感染者は出ていません。(渡航制限あり)
春節と言う大きな稼ぎ時を棒に振り、利より実をとる水際対策を成功させたマカオは、その感染予防措置で注目を浴びている台湾と同じく明確な危機管理プログラムが存在しているということでしょう。2003年のSARSが蔓延した苦い記憶は新しく、彼らがそれを教訓として確立したであろうリスクマネジメントは学ぶ点が多くあります。

残念ながら日本は、今回の対応で感染症における危機管理が甘いと世界に知らしめる結果となってしまいました。事態の一刻も早い収束を願いつつ、この教訓が今後のリスクマネジメントに活かされんことを祈るばかりです。

2 新型コロナウィルス 日本のIRにおける影響

新型コロナウィルスが経済にも大きく影響をもたらしているのはご存じのとおりです。年末よりトップニュースのひとつとして扱われていたIR関連の報道は、今はあまり姿を見せません。反対運動で紛糾していた横浜市の説明会も2月20日以降延期となっています。国への申請・認定時期は変わらず2021年1月から7月のため関連各所は調整に奔走していると考えられますが、肝心のIR事業者もコロナウィルスでその収益性に変化が出ているため、当初の予定通り事が進むかどうかはわかりません。

日本版IRにも名乗りを挙げているMGMリゾーツはマカオを大きな収益源の一つとしているため株価変動が大きい事業者に挙げられます。本国アメリカはラスベガスでもコロナの影響は深刻さを増しており、ラスベガスの経済を支える大規模な展示会も中止・延期を余儀なくされているため全体の景気は下方へ進んでいます。このことにより日本版IRへの熱が冷めるのか、はたまた次への成長の起爆剤として推し進めるのか・・・将来像は依然不透明です。

3 感染予防のための物理セキュリティ

ところでここで感染予防の観点より、物理セキュリティを見つめる向きが出てきています。
今回の騒動で各イベントや施設で真っ先に導入されたのはサーマルカメラです。政府のイベント自粛要請が発表される前の2月中頃までは、各イベント会場に可搬型のサーマルカメラを設置し感染防止にあたっている姿が見受けられました。また、東京都交通局は都営地下鉄内にサーマルカメラを用いた検温コーナーを設置しました。

東京都交通局 3月4日付プレスリリース 「駅ナカ検温コーナー」

https://www.kotsu.metro.tokyo.jp/pickup_information/news/subway/2020/sub_p_202003049015_h.html

サーマルカメラは感染症予防のみならず、ここのところ顕著な夏場の気温上昇という環境変化において、熱中症対策のひとつとしても検討されています。

厚生労働省 あんぜんプロジェクト 平成30年度企画 サーモグラフィーを利用した熱中症の見える化

https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzenproject/concour/2017/sakuhin4/n254.html

現状、サーマルカメラは空港の検疫所や官庁施設など設置場所が限定的ですが、感染症や高齢社会の熱中症対策として予防のログとして有効です。今回の教訓として民間での恒常的な利用の広まりが考えられます。

また、非接触で入退出を統制・管理できる生体認証も感染症予防として取り上げられるソリューションのひとつです。
生体認証においては現在、顔認証の認知度が高くなっていますが、その他人受入率(FAR:False Acceptance Rate)が必ずしも低くないことから、より厳格な認証を必要とする場合は暗証番号入力やIDカード利用と言った二段階認証が必要になります。その点、虹彩認証はFARが極めて低く、スキャナーに目をかざし認証するため接触なく本人照合が可能です。

Iris ID社 2月25日付ニュースリリース The security industry’s role in containing the coronavirus

https://www.securityinfowatch.com/access-identity/biometrics/article/21126860/the-security-industrys-role-in-containing-the-coronavirus

先のカジノを再開したマカオでも、従業員はじめ利用者の検温を実施しています。かかるリスクの排除と利益を天秤にかけたら、いずれサーマルカメラの常設も考えられます。未知のウィルスによるパンデミックが現実のものとなった今、想定されるリスク・対策も広く検討しなおされることでしょう。

さて、今回で11回を数える ”VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究” ですが、本稿をもってシリーズを終了します。ご愛読いただいた皆様、ご意見をいただいた皆様、まことにありがとうございました。IRという新しい文化を通してセキュリティを考察する試みを通して、IRにとどまらない物理セキュリティの在り方を検討する一助になれば幸いです。

弊社ロックシステムの取り組む物理セキュリティは、オフィスや工場のビジネスセキュリティといった限られたシーンだけでなく、社会全体の不安を払しょくするためのソーシャルセキュリティにおけるプレイヤーを目指しています。今後も興味のあるセキュリティ分野についてご意見・ご感想をお待ちしております。


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