(日本語) <第7回>VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究

2020年東京オリンピック、2025年大阪万博・・・
これらに次ぐ景気拡大の起爆剤として目される“統合リゾート(以下IR)”。
施設内の一部にカジノを含むことでその候補地をはじめとして事業者、開発費用、治安や依存などの議論があるため、従来のリゾート開発とは異なる色彩を放ち注目を浴びています。
保安・防犯に始まり情報保護や内部不正の抑止までカバーする“セキュリティ業界”においてもIRは目を離せないビジネスのひとつ。
新しい文化形成の過程上では新しい脅威が生まれるものですが、この世界を巻き込む大きな挑戦を”物理セキュリティ”の視点からみなさんと研究していく「VIVA、CASINO! カジノ・セキュリティ研究」連載コラム。
最新の物理セキュリティシステムと海外事例を、なるべく肩肘張らず平易な言葉でわかりやすく発信していきたいと思います。

<第7回 目次>
1 新年に向けて高まるIR気運
2 本当に怖いカジノとは
3 カードカウンティングvsカジノセキュリティ

1 新年に向けて高まるIR気運

2019年も残すところあと1か月。年の瀬にはすす払いを行い本年の厄を落として新年への準備を始めるものですが、ことIRにおいては気運上昇、新しい年2020年にさらに大きく飛躍せんと各地でIR産業展が計画されています。

2019年12月11日(水)・12日(木) 「第1回[北海道]統合型リゾート産業展」 場所:アクセスサッポロ
2020年1月29日(水)・30日(木) 「第1回[横浜]統合型リゾート産業展」 場所:パシフィコ横浜

見本市・展示会は新しい技術の発表や既存製品の販売促進、市場マーケティングや同業種・異業種間のコミュニケーション拡大のため活用されますが、ことIRにおいては候補地での開催が地の利やその土地の文化を共有しやすいので話が具体的になりやすく、また国内のモデルケースが無い文化なので設計段階で自由度が高く、新しい技術やアイデアは歓迎される向きがあります。特に来年1月の横浜で開催される産業展はカジノに絡む展示会としては珍しく、ゲーミング事業者は出展対象としない意向も打ち出しているので、より都市や環境、IoT技術や設備設計のコンセプトが重視される展示会となるでしょう。

また11月19日、観光庁はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の認定申請を2021年1月4日から7月30日まで受け付ける案を公表しました。各候補地は早い段階から市民説明会を実施しており、市民の賛同をどこまで得られるかも誘致において大事な指標となります。ここ横浜では本年12月より市民説明会を市内18区で開催しますが、いよいよ横浜市も本腰を入れて進めている様子が伺えます。

2020年は言わずと知れたオリンピックイヤーですが、IRにおいてもそのオリンピック後を左右する重要な準備期間になります。全体を通して見ても、情報収集から具体的検討に移行する時期と言えるでしょう。IRの行方は新年も目が離せません。

2 本当に怖いカジノとは

さて、読者の皆さんが本コラムを通じてIRに興味をお持ちになり、カジノを含めIRを前向きに捉えていただけることは大変喜ばしい限りです。しかしここで、本当に怖いカジノとは何か、についてもご紹介させていただきます。

IRのカジノは国家主導のもと合法的な整備が進んでいますが、既に日本には”違法カジノ”が存在します。2016年に著名なスポーツ選手が違法カジノ店で賭博行為を行い問題になりました。このように違法カジノ店はたびたび話題に上がりますが、問題は”禁止されている賭博行為を行った”だけでなく”違法カジノ店は暴力団の資金源になっている”ところです。

インターネットカジノと呼ばれる店があります。これは一見インターネットカフェのような佇まいをしていますが、実際はマシンで賭博を行うカジノ店であり、言わずもがな胴元は暴力団です。裏カジノはディーラーが存在するものもありますが、インターネットカジノはディーラーが存在せず、開設しやすいこともあってか相当数の店舗があると言われており、検挙されたというニュースもよく見かけます。違法カジノは暴力団とのつながりができやすくトラブルに巻き込まれるほか、警察に捕まるリスクも高く、色々な意味で危険でしかありません。ここ横浜もインターネットカジノの多い地域のひとつです。カジノについては違法店を摘発するより、合法化して取り締まる方が治安維持向上につながると考える向きもあります。

警視庁公式チャンネルでは、裏カジノに手を染めたばかりに暴力団と関りを持ち、人生を踏み外す様子が描かれています。

「本当に怖いカジノ」は、金銭的な損失にとどまりません。インターネットカジノはじめ裏カジノは一般の人が簡単に立ち入れるものではありませんが、「違法」には安易に近づかないことがリスクマネジメントの観点からも強くお勧めします。

3 カードカウンティングvsカジノセキュリティ

先の違法カジノ店は違法だけあってイカサマも横行していると言われます。とりわけインターネットカジノはマシンでプレイする上に監視機関がない状態なので、店側に有利な設定にすることは容易です。統合型リゾート(IR)に参入する事業者はもちろんイカサマをしない・できないように管理・運営されていますが、ここでご紹介するのは歴史あるイカサマ”カードカウンティング法”です。

映画等でも知られているこの手法は、1950年代、当時MITの講師であった数学者、エドワード・O・ソープ博士によって確立された統計を用いたブラックジャックの勝利方法です。この理論は後に金融工学に応用され、現在の金融市場にも大きな影響を与えています。
ブラックジャックはディーラーとプレーヤーに各々カードを配り、手札の合計数が21に近い方が勝ちと言うシンプルなゲーム。カードカウンティングは場に出ているカードの数値から残りのカードの数値を割り出し、手札と合わせた場合の勝利の確立を探るという手法です。素早い暗算能力と数学的思考が問われますが、開発者エドワード・ソープ博士はこの方法で2日間を用いて10000ドルを2倍以上に増やし、1962年にはこの手法を著書として出版しました。これによりこの手法を用いて勝利する人が増え、現在ではカウンティング行為は禁止されています。しかし禁止されているとはいえ、カウンティング自体は頭脳で行うもの、カジノ側はどうやってこの歴史あるイカサマ行為を見抜いているのでしょうか?

歴史があるだけにカジノ側にもノウハウがあります。手口はもちろん、プレーヤーの目線、掛金の流れでイカサマの有無を探ります。同時にプレーヤーの背景を調査し、過去の履歴を探ります。これらはディーラー、巡回警備員、監視スタッフなどチームの連携が重要になり、それを補助するために高精度の監視カメラ、プレーヤーの情報を蓄積したデータベースが活きてきます。カジノのセキュリティレベルが問われる瞬間のひとつです。違法カジノと同様、カードカウンティングなどオーソドックスなイカサマ手法も挑戦しないことが安全と言えるでしょう。


カジノセキュリティ研究会