ソフトターゲットのセキュリティ考察「小学校、商業施設、公共施設などの物理セキュリティを考える―マグナロックという防犯対策」
2001年6月8日、大阪府池田市の大阪教育大学附属池田小学校で発生した無差別殺傷事件は、20年の時を経た今でも記憶に残る痛ましい事件です。23人の死傷者を出したこの事件は、それまで「開かれたコミュニティの場所」と社会的に認識されていた学校を、「防犯体制が確立されるべき場所」に変容させました。
この事件以降もたびたび学校や介護施設、商店街やショッピングセンターなど多数の人間が無作為に集まる場所で、同様の事件が起きています。これらの痛ましい事件を防ぐためには、物理セキュリティ上どのようなアプローチが必要なのでしょうか?
1999年4月アメリカ合衆国コロラド州コロンバイン高校で起きた銃乱射事件は、アメリカの学校における銃乱射事件の中でも大規模な犠牲者を出したことで有名です。残念ながら無差別殺傷事件は世界各地で発生しています。アメリカをはじめ諸外国ではテロリズムの対抗措置としてのセキュリティ研究が進んでおり、その脅威への脆弱性の度合いによって「ハードターゲット」「ソフトターゲット」と区別されます。
ハードターゲットとは立ち入りが制限され、警備が十分にされている政府施設や軍事施設、空港や発電所等が挙げられます。他方、ソフトターゲットとは学校、病院、駅やショッピングセンターなど不特定多数の人が出入りする民間施設を指します。ハードターゲットに比してセキュリティ性が低いことからテロリストの標的になりやすく、事実、過去40年の間で世界で発生したテロ行為の7割はソフトターゲットである学校、劇場、イベント会場、鉄道駅などの市中にて発生しています。
「政治思想に基づくテロリズム」-平和を標榜する日本ではあまり身近に感じられないかもしれませんが、心中や拡大自殺というキーワードは日々のニュースを通して日常的に聞こえてきます。
警視庁組織令第39条ではテロリズムを「広く恐怖又は不安を抱かせることにより、その目的を達成することを意図して行われる政治上その他の主義主張に基づく暴力主義的破壊活動」と定義しています。無差別に他者を巻き込む殺人事件はその主義主張はさておき、テロ行為と言えるでしょう。
現代日本において、ソフトターゲットとされる学校、病院など民間施設、イベントの企画や主催をする管理者、自治体が絡む市街地整備にまで、テロ脅威への備えを含めた安全対策は再検討されるべき時に来ています。
さて、先の大阪教育大学附属池田小の事件に戻ります。この事件が世間に与えたインパクトは大きく、2002年以降、文部科学省をはじめ各自治体で「学校における安全管理」のマニュアル整備が始まり、その後、学校保健安全法においてすべての学校において危険等発生時対処要領(危機管理マニュアル)の整備が義務付けられました。いわゆる学校の安全管理とは校内の事故や感染症対策、いじめなどのトラブルや心身のケアまで多岐にわたるものですが、その間口のひとつとして「不審者の侵入を防ぐ」という項目があり、今や施設の常時施錠や監視カメラの設置、入退室の管理は当たり前のものとなっています。
その「不審者の侵入を防ぐ」目的よりセキュリティシステムの導入を考えたとき、建物の構造や環境、運営に合わせたシステムの構築が不可欠です。公立学校施設の多くは昭和の第2次ベビーブーム(1971~1974年)を契機に建築されており、現在6割強の施設が築30年を超えています。老朽化による全面建て替えを予定されている施設は設計段階でシステムの導入が可能ですが、既存の建屋を今後も利用する場合はいくつかのポイントを押さえて現状に合わせたシステム設計が必要です。
当時の事件を受け、既存の学校施設へのセキュリティシステム導入という潮流を支えた製品のひとつが、SECURITRON社の電磁石式電磁錠マグナロックです。
電磁石の吸着により施錠するタイプの電気錠であり、その防水性・防塵性の高さより室内のドアはもとより外構の門扉に多く採用されることとなりました。職員室など室内に設置されるコントローラより遠隔で施解錠することが可能であり、インターホンやモニターと組み合わせることで利便性が高まります。消費電力は製品により3.6~4.8W、使用温度範囲は-40~60℃とシンプルかつ頑丈。事件より20年を経た今でも、信頼がおけると人気の高い商品です。
https://www.youtube.com/watch?v=8t78T-dnIEs
ソフトターゲットとなる場所では、物々しいセキュリティ対策がその利便性や目的と照らしてそぐわないことが大いにあります。運用における利便性とセキュリティ性向上の堅牢性のバランスをとることは非常に難しいと言えます。ひとつひとつ丁寧に検討し、発生の予防や万一の対策を怠らないことが肝要です。