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[物理セキュリティの視点から視る消防管理]第5回 海外の防火基準より「パニック・バー」の採用

International Building Code

International Building Code 「国際建築基準」は1994年に国際基準評議会(International Code Council)が制定した全米共通のモデル建築基準です。

アメリカの建築基準は民間団体が建築基準を策定し、州や地方政府がそれぞれ地域の実情に合わせてその中の基準を採択するという建付けになっており、その主軸はハリケーンを代表とする気候災害への備えや、建物の健全性を担保するなど安全面におかれています。その中でNational Fire Protection Association:NFPAという消防関連組織が火災への対応について定めています。今回はこの国際建築基準:IBCとNFPAの要求事項をベースに、アメリカの防災設計を見てみましょう。

シカゴ イロコイ劇場の火災事故

1903年12月30日、イリノイ州シカゴのイロコイ劇場で発生した火災事故は、600人を超える死者を出した米国史上最悪の火災の一つです。1602名を収容する壮麗な建物は、当時のアメリカでは芸術的に高い完成度を誇るものとして称賛されていました。事故当日、劇場では「青ひげ」など人気の演目がかかっており、立ち見客を加えると収容人数を大幅に超えた2000人以上の観客がいたと言われています。
火災の発生原因は照明器具の短絡。発生した火花がステージの演出用カーテンに燃え移り、歴史的に記憶される不幸な出来事を引き起こしました。この火災で明らかになったのは、施設の管理者による火災発生時の備えの不十分さ、消防に対する意識の低さです。これほど多くの人員を収容する施設にもかかわらず、外部への出入口は1か所のみという構造で、スプリンクラーや警報装置、電話やなんと水道までもが未整備だったようです。備えとして設置されていた消火器も、結局は用をなさないものでした。避難経路の確保がなされていないばかりか、従業員に対して避難訓練を実施せず、消防設備の取り扱いについても周知されず、当時としても驚くべき杜撰さでした。
火災に対する備えのなかった建物や扉は、その構造が悲劇を伝えています。観劇中の思わぬ火災でパニックになった群衆は、劇場内のメインの出口に詰めかけましたが、この扉は内側(手前)へ開く構造になっており、押しかけた人々が積み重なり扉を開くことができません。さらにその他の非常口として設置されていた扉はカーテンで遮蔽されていた上、多くは施錠されていたそうです。この事故は、その後のアメリカの消防の在り方について大きな影響を与えました。

パニック・バーの採用

こういった歴史を背景に、先の建築基準IBCでは消火設備について設置要件を定めており、各州はその基準をベースに立法しています。さらにその消火設備の技術基準やメンテナンス基準は、NFPA(全米防火協会)が詳細を定めています。イロコイ劇場の火災は、この基準類制定においても大きな教訓となり、その中で設置を義務付けられているのがパニック・バーです。
パニック・バーに求められる要件は、避難経路となる開き戸をワンアクションで開扉する、つまり「押せば開く」こと。このシンプルさは利用者を選びません。アメリカをはじめ海外では多くの人が集まる商業施設や空港、工場や基地などあらゆるところに設置されています。中でも病院や学校などはよりそのシンプルさが愛されます。非常時であればあるほどユーザーフレンドリーは大きな意義を発揮します。

パニック・バー (撮影協力:ゴールドマン株式会社)

 

非常時の安全性と平常時のセキュリティ、どちらを優先するか?

ところで気になるのは「セキュリティ」です。非常時の退出という安全面はもちろん、平時はセキュリティを担保する。どちらも優先度が高い事項です。建物が持ちうるこの二律背反は満足させられるのでしょうか?
結論から申し上げると「可能」です。様々な機器を組み合わせることにより、さらに使い勝手の良いシステムになり得ます。電気錠を組み合わせることで入室時は制限をかけ、退出時はフリーにする。リモコン制御や自動ドアクローザと組み合わせることで、安全面とセキュリティを兼ね備えたバリアフリー化を実現する。新しく建てる施設に高い付加価値を盛り込む、既存の扉に採用してモデルアップする。安全から発した製品は、より有意義な用途を目指し、日々その性能を拡張しています。
法令による要求は、実運用に則していることが重要です。諸条件がかえって使い勝手が悪くなってしまってはせっかくの安全設備は普及しません。機能を付加して安全性が増す、運用利点使い勝手が増す、という視点無くしては人々の生活に根付きません。

セキュリティのグローバリゼーション

消防対策という安全性も、侵入制限というセキュリティも、利用するすべてのユーザーにとって価値のあるものでなければなりません。海外のスタンダードの採用は、グローバリゼーションを促進しSDGsの取組としても有効です。日本では海外企業や米軍施設を中心に採用されているパニック・バーですが、日本の消防においてスタンダードな設備となる日もそう遠くないでしょう。

ここで、弊社YOUTUBEにて公開しているゴールドマン社をご紹介します。新横浜の同社ショールームでは、スタイリッシュで堅牢性の高い海外セキュリティ製品を見ることができます。

ゴールドマン株式会社ホームページ
https://goldmanexa.com/

(株)ロックシステムは物理セキュリティのプロの知見と防火管理者の視点をもって、ユーザのみなさまの防災活動を支援し、運用について助言致します。

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