[物理セキュリティの視点から視る消防管理]第6回 建設現場の火災【最終回】
労働安全衛生規則第279条 (危険物等がある場所における火気等の使用禁止)
事業者は、危険物以外の可燃性の粉じん、火薬類、多量の易燃性の物又は危険物が存在して爆発又は火災が生ずるおそれのある場所においては、火花若しくはアークを発し、若しくは高温となつて点火源となるおそれのある機械等又は火気を使用してはならない。
2 労働者は、前項の場所においては、同項の点火源となるおそれのある機械等又は火気を使用してはならない。
2020年代、新しい時代の特徴と感じられるものの一つに、「災害の多さ」が挙げられます。
地震はもとより、度重なる豪雨や大型台風、激しい気候の変化による酷暑や冷害など我々日本人は最も「防災意識」を求められる時代を生きています。
(株)ロックシステムは物理セキュリティのプロとして、創業以来「防犯」をテーマに社会に貢献してきました。ともすると他者の侵入を許さない「防犯」は、災害時に他者の救助を必要とする「防災」と相反するものと考えられなくもありません。しかし、侵入経路も退避経路も同じ「出入口」。本コラムは身近な「消防管理」の観点から、消防を補助する物理セキュリティの在り方にアプローチしていきます。
これまで見てきた火災事例は、全て既設建築物でした。しかし、火災は建築途中の建物でも発生します。建築中の火災を防ぐには、どのような対策が取られているのでしょう?
平成30年の東京都多摩市の建設現場火災は皆さんの記憶に新しいことと思います。地上3階地下3階のオフィスビルは、工事進捗90%というところまで来ていました。火元となったのは地下3階、鉄骨溶断作業中の火花がウレタン製断熱材に引火したのが原因です。この事故は死亡者5人、救急搬送42人の大惨事となり、工事元請建設会社の社員や現場責任者・下請作業員は、業務上過失致死傷と業務上失火に問われました。さらに安全衛生責任者ら2名は執行猶予付禁固刑に処されました。判決の争点は「火災の発生危険性を予見しながらも防護措置を取らずに安易に作業を進めた」という労働安全衛生法違反でした。
労働安全衛生規則第279条
(危険物等がある場所における火気等の使用禁止)
事業者は、危険物以外の可燃性の粉じん、火薬類、多量の易燃性の物又は危険物が存在して爆発又は火災が生ずるおそれのある場所においては、火花若しくはアークを発し、若しくは高温となつて点火源となるおそれのある機械等又は火気を使用してはならない。
2 労働者は、前項の場所においては、同項の点火源となるおそれのある機械等又は火気を使用してはならない。
実は建設現場の火災は多く、東京消防庁管内では100~200件/年の火災が発生していると言われています。
出火原因は先の事故のような溶断・溶接作業による火花の発生によるものに次いで、放火や放火疑い、たばこの不始末などが挙げられます。工事現場における防火管理者は当該消防計画に基づき、火気使用制限や易燃材料の調査を含んだ施工計画の把握、放火を防ぐ作業場内外の安全管理、喫煙所の環境整備や防災教育、実際に火災が発生した際の避難経路まで、幅広く防火管理に努めなければなりません。工事中の消防計画については、各行政庁で作成概要や書式が公開されています。
総務省消防庁 消防計画に係る法令等
https://www.fdma.go.jp/singi_kento/kento/items/kento004_07_sanko_01.pdf
東京消防庁 防火管理者・消防計画・訓練通知書・自動通報
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/drs/ss_mokuteki02.html
さて、工事現場の防火管理に、我々物理セキュリティ業界が寄与するにはどうしたらいいでしょう?
その答えのひとつは、監視カメラにあります。
火災原因の主な原因として放火・放火の疑いが含まれているということは、先ほどお伝えした通りです。実は工事現場は盗難も多く発生します。建築資材や建材はじめ、重機や工具類もそのターゲットとなっており、それらの盗品は海外で売り捌かれたり、他の現場で使用されたりしているようです。建築中の建物は警備が薄いことが多く、ゆえに盗難に加え放火や器物損壊などのリスクも高いと言えます。
このリスク低減に、監視カメラが活躍します。昨今のカメラの画像解析能力やアラート機能の高さについては、既に皆さんご存知かと思われます。監視カメラにブザーや表示灯を連動させ、もしくはライト照射で威嚇し発報することで、より高い防犯性能を発揮し、引いては防火に役立ちます。
防犯用に監視カメラを設置するとなると、サーバーの設置や解析用アプリケーションの準備など、大がかりなシステムが必要という印象があるかもしれません。期間限定の工事現場では、手軽なシステムが望まれます。弊社でも取扱いのあるVIVOTEKのソリューションでは、カメラにAI解析機能が備わっており、簡易的に防犯システムを構築することが可能です。
Smart VCA~AIにより強化された最先端のビデオ分析
https://www.forcemedia.co.jp/vivotek/solution_technology/smart-vca
僻地の工事現場では、ネットワークの構築が難しい場合もあります。しかし、監視カメラを遠隔管理することにより、防犯・防災の上でのメリットに加え、監視に対する管理工数の削減に効果がある場合もあります。「工事現場でも簡単にネットワークを構築したい」、「そのネットワークを一元管理したい」・・・ここではローカル管理のセキュリティシステムを、「安全・安心・簡単」にリモート接続する製品をご紹介しましょう。
https://locksystem.co.jp/bridgebox
ブリッジBOXでは、工事現場など陸の孤島になりやすい場所のセキュリティシステムを、簡単にリモート接続することが可能です。SIM搭載済み、事前設定済みのため、他の知識や労力を要せず、電源を入れるだけで簡単に各拠点間をVPNで接続します。拠点間で通信されるデータは暗号化されているため、不正アクセスも排除します。
工事現場によっては、監視カメラやネットワークを導入し管理するほどの規模ではない場合もあるかもしれません。しかし、より実践的な防火管理の必要に迫られたとき、電池式の放火監視センサーを設けるという選択肢もあります。
竹中エンジニアリング 防火監視センサー
https://www.takex-eng.co.jp/ja/products/item/2951/
建設現場は様々な職種の作業員が入り混じり出入りする環境であり、一口に防災教育と言っても通常の場合より困難です。また、溶接作業など火気が発生する工程があったり、ウレタン断熱材など可燃物が多く存在したり、と火災発生の危険性が高い場所です。工事現場の防火管理者は、既設の建物を管理するよりも厳重な注意を払う必要があると言えるでしょう。
さて、本コラムにてこの連載は終了します。防火管理者の役割、また防火のための設備の重要性が少しでも皆さんに伝わったら幸いです。(株)ロックシステムは物理セキュリティのプロの知見と防火管理者の視点をもって、ユーザのみなさまの防災活動を支援し、運用について助言致します。